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DeNAの成長戦略X-device、X-borderを支える技術とは

「モバゲータウン」のサービス名称を「Mobage」に変更し、グローバル展開が本格化するDeNA。あらゆる情報端末に対応する「X-device」、プラットフォームをグローバルに展開する「X-border」を支えるDeNAの技術における最新状況を「Developer Summit 2011」から探ってみた。

南場社長がエンジニア主導を推進する理由とは

 ソフトウェア・システム開発者、ネットワーク管理・運用者など、IT技術者全般を対象とした大規模なカンファレンスとして広く知られる「Developer Summit」(通称、デブサミ。翔泳社主催)。特に今年は、DeNAが1トラックを貸しきって「Mobile Future Conference by DeNA」を併催するなど、モバイルやソーシャルアプリケーションの話題があちこちで展開された。

 DeNAのカンファレンスでは冒頭、同社CEOの南場智子氏が、DeNAの創業以来の成長過程を振り返りながら、エンジニアの役割について講演した。「エンジニアではない社長がどんなふうにエンジニアと接点をもって会社を経営しているか」という観点からの話は、エンジニアの開発環境をめぐる重要な示唆に満ちたものだった。

 創業時のオークションサイト「ビッダーズ」の立ち上げ時に南場氏が痛感したことは、技術の内製化の重要性だ。システム・パートナーの管理ができていなかったため、オープンの直前になって初めてシステムが何も完成していないことに気づいたのだ。

「システムそのものが商品なのだから、その開発力でナンバーワンにならなければならないのに……なんとおろかだったか」と深く反省したという。

 2004年の携帯電話専用オークションサイト「モバオク」スタート時は、モバイルユーザーに最適化するため、あえてシステムをビッダーズから切り離して、一から構築していった。その決断は、一人のアルバイト社員の提案を受けたものだった。2006年の「モバゲータウン」のスタート時も、「使える予算は1億円まで」と釘を刺したものの、南場氏自身はその企画内容に関与していない。基本的には3人のメンバー(エンジニア1名、企画2名という構成)に任せた。社内のエンジニアを信じ、その自発性に依拠し、全面的に事業そのものを任せる。もちろん失敗も多々あったが、その経験からエンジニア自らが得た教訓こそが、その後のDeNAの成長エンジンを形づくったのだ。

 中には法人営業を担当していた新卒社員を本人の希望でエンジニアに転向させ、数年後に新サービスの開発を任せたこともある。結果は失敗だったが、そのエンジニアが次のミッションで生み出したのがヒットゲーム「怪盗ロワイヤル」だったというのは有名な話。「失敗を活かすことは、自らサービスを開発するネット企業にとっては不可欠の姿勢」と南場氏は語る。

 エンジニアの奮闘に「思い切って報いる」ことも、DeNAの基本方針だ。南場氏はこれまでも「優秀なエンジニアには年収3500万円出す用意がある」と公言してきたが、この日の講演では「それもけっして上限ではない」と言い切った。「ユーザーに直接触ってもらっている部分を開発しているのがエンジニア。そこに最大限報いるのは企業として当たり前のこと。エンジニアを“腕”“マインド”“実績”の3つの視点で評価して、それに見合う報酬を支払いたいがっている。」という。

 いまスマートフォン、ソーシャルアプリケーション、ソーシャルゲームは大きなうねりのように世界に広
「DeNAだけでなく、日本全体のエンジニアの力を世界に見せつけるチャンス。彼らが勝負できるより大きな場所を用意するのが経営者としての私の役目。今後のグローバルな事業展開の中で、私たちが欲しいのは日本トップレベルというより世界トップレベルのエンジニアだ。結果的にはDeNAグループのエンジニア集団はより多国籍化していくだろう。日本のエンジニアもそこで揉まれながらさらに成長していくことを期待している。DeNAはさまざまなエンジニアのキャリアパスを用意している。将来は経営陣にもエンジニア出身者をどんどん入れていきたい」  と、南場氏は講演後に語った。

ngCoreで開発中のゲームを国内で初めてデモ

 セッションの中で守安功・取締役兼COOが示したのは、世界へ挑むDeNAの「X-border」「X-device」戦略だ。中でも重要だったのは、スマートフォンにおけるX-Platform化を実現するSDK「ngCore」の話だ。

「ngCore」は、DeNAが2010年10月に買収した米ngmoco社が開発する、スマートフォン向けソーシャルゲームに特化したゲーム開発エンジンだ。ngmocoの強みであるスマートフォンにおけるゲーム開発ノウハウを具現化したものだが、ここにDeNAの強みである技術力、「モバゲータウン」によって培われたコミュニティ運営ノウハウ、マネタイゼーションノウハウなどを注入し、より強力なエンジンにすべく開発が続けられている。

「このことによって、ユーザーのみならずゲームデベロッパーにとっても最良のソーシャルゲームプラットフォームがスマートフォン市場に提供されることになる」と守安氏は語る。

「ngCore」ではiOSやAndroidに向けたアプリケーションを、ネイティブと同等のパフォーマンスを持ちながら、JavaScriptで開発することができる。さらに各OSの差分を開発エンジン側が吸収するため、容易にクロスプラットフォーム開発ができるなどいくつかのメリットがある。ゲームデベロッパーは、ワンソースで国内外の「Mobage」に同時にゲームを提供することが可能になる。

 会場では国内では初めて、「ngCore」で開発中のゲームのデモ版も公開された。

 講演後の守安氏に、今後の世界戦略に不可欠なエンジニア人材について話を聞いた。

「これまではPCや携帯からアクセスするWebサービスが中心だったが、スマートフォン用の開発エンジン「ngCore」を手に入れることで、私たちはより下位のレイヤーにも注力しなければならない。これまでとは違うエンジニアのスキル・経験が求められると思う。例えば携帯端末メーカーで組込み型のアプリケーションを開発していたような人も必要になるだろう。

 また、「ngCore」の開発では、世界中のパートナー企業に対してロードマップを明確に示しながら開発に参加してもらう必要があるため、これまで以上に、大規模なプロジェクト・マネジメントの能力も求められている。海外事業の展開にあたっては、単に技術知識だけでなく、世界各地の生活文化を理解するグローバル・コミュニケーション能力も必要だ。海外留学や海外生活経験も人材要件の一つになるかもしれない。社内の英会話勉強会への参加も、私自身も含めて熱を帯びてきている」

 その一方で、守安氏は将来の事業基盤を用意するR&D開発にも力を入れることを表明した。
「当面は『ngCore』による開発に注力するが、それが長期的にも主流である保証はない。例えばHTML5を活用したゲームエンジンの開発も同時に研究していく必要がある。今後登場する新しい端末の形を予測し、それに対応する必要もあるだろう。これまではどちらかというと、目先の事業にとらわれてきたが、今後はもっと先をみて、3~4年後の事業展開で勝つための基盤的な研究を強化する。そこでは、ネット技術の世界的動向をみきわめながら、新しい事業やサービスを構想する力が求められている」

DeNAのスペシャリストが、サーバーやWebアーキテクチャの未来を語る

 カンファレンスでは、ソーシャルメディア事業本部メディア統括部プラットフォームシステムグループの山口徹氏をモデレーターに、DeNA、KLab、ライブドア、ドリコムのインフラ系エンジニアによるトークセッションも催された。ここでは携帯電話向けのソーシャルアプリケーションを例に、月間数十億PV、数百億PVといった膨大なトラフィックをさばくためのノウハウの一端──例えばクラウド技術への対応、MySQL、NoSQLの活用やサーバーのスケールアップ、スケールアウト技術などが語られた。

 現在モバゲータウンを初めとするDeNAのサービスは、毎日20億PV超のアクセスを有しており、それをさばくDBサーバーは国内3拠点に500台以上、数百を超えるアプリケーションがそこで動いている。これだけの規模のアクセスを処理するサーバー技術は、業界内で高く評価され、その今後についても注目を集める。同社システム統括本部IT基盤部の松信嘉範氏による「大規模Webサービスのためのデータベース技術の現在・未来」と題したセッションは、そうした関心に応えるものだった。

 松信氏によれば「Webサービスを支えるデータベースにはパフォーマンスの維持、ハードウェアコスト、人的コストの3つのクリアすべき課題がある」。パフォーマンスを維持するためには、シャーディング、水平分割などの手法が、ハードコスト抑制のためには、PCI-EXxpress SSDなどの活用で1台あたりの性能を上げることが重要になる。人的コストについても、規模の拡大に比例する形でサーバー技術者を増やすわけにはいかないので、故障率を下げる、フェイルオーバーを自動化するなどの工夫で、一人の管理者が担当できるサーバー台数を増やす必要がある。

 松信氏の「ベンチマークをうのみにするな。数値上ではよくても、実際にはストールが発生し、サービスレベルが落ちることがある。こればかりはちょっとテストしただけでは見つけにくい」という指摘は、日々、DeNAの中でサーバーの高可用性技術や自動化技術を検証している人ならではのものだった。

 松信氏は昨年まで日本オラクルに在籍し、オープンソースコミュニティの中では、MySQLのエバンジェリストとして知られていた技術者だが、次の「ウェブアーキテクチャの歴史と未来」のスピーカー、奥一穂氏(システム統括本部 IT基盤部)のセッションも注目を集めた。Webアプリケーション統合開発環境の開発実績を評価され、2004年には情報処理推進機構(IPA)から「天才プログラマー/スーパークリエータ」の一人として認定された文字通りのスーパー・エンジニア。昨年末まではサイボウズ・ラボに勤務していたから、彼がDeNAに転職してきたことを知らなかった聴衆も多かった。

 奥氏は、Web技術のトレンドを「マスコミ期」(Yahoo!ポータルなど)、「ブログ期」(livedoor blogなど)「ソーシャル期」(mixiなど)「リアルタイム期」(twitterなど)という独自の時代区分で4期にわけ、それぞれの変遷をたどる。この間も一貫して生き続けているプロトコルは、HTTPとHTMLだが、これらはともに転送するリソースや記述する対象がなにものかであるかは規定しない。つまり、これらのプロトコルはアプリケーション中立な基盤技術であったため、現在まで生き延び、かつ進化を続けてきたという。
 ただ、それぞれの時期を支えてきたコア技術は変遷してきた。Webの進化とともに非同期書き込みが重要になり、現在のリアルタイム期では、非同期書き込みの増大に対応するWebアーキテクチャは「キュー+ワーカーモデル」である。

 奥氏は「短い間にもこのように変遷してきたWebアーキテクチャであるが、その歴史を振り返ることで、古いトレンドからも学べることはあるし、最新の手法は何かを知ることもできる」という。DeNAのサービスがインターネットの未来と共に生き続けるためには、このように歴史性を踏まえたエンジニアの視点が不可欠と思わせる議論だった。

スマートフォン向けクロスプラットフォーム対応はどこまで進むのか

 DeNAカンファレンスの掉尾を飾ったのが「Smartphone X-Platform開発」と題したセッション。近藤和弘氏(DeNAソーシャルメディア事業本部ソーシャルゲーム統括部スマートフォン開発グループ)、アドビにてFlashプラットフォーム上のアーキテクチャデザインのコンサルティングを担当してきた上條晃宏氏(cuaoar)、米Appcelerator社で Titanium Mobile SDKの開発にたずさわる増井雄一郎氏によるリレートークだ。

 今後、スマートフォン向けのソーシャルアプリ開発においては、iOS、Android、さらにこれから登場する新しいOSなど、異なるOS間をまたいだワンソースのマルチプラットフォーム展開が重要になる。それを可能にするためのエンジンの一つが、先に守安氏が紹介したngCoreである。昨年10月にソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズからDeNAに転職してきた近藤氏は、守安氏の概論を受けて、より詳細に「ngCore」のフレームワークを解説すると共に、「Mobage」用アプリのデベロッパのための開発環境、Mobage SDKの開発が進んでいることを報告した。

 増井雄一郎氏が紹介した「Titanium Mobile」も、JavaScriptによる記述だけでアプリケーション開発を行え、一つのコードでiOS/Androidの両方に対応できる点は同様。もちろんアーキテクチャや目指すべき方向性は違うが、一つのジャンルの中では「ngCore」と競合する開発環境といえる。最近日本でも人気のiPhoneアプリ「MogSnap」も「Titanium Mobile」で開発されている。増井氏はその開発工程を紹介することで、ObjectCやJavaを知らないブラウザ開発者にも使える点など、「Titanium Mobile」によるアプリ開発の敷居の低さを強調した。

 AdobeのFlashも含め、複数の開発環境がいま一斉にマルチプラットフォーム化を進めている。その最前線でエンジニアの関心を引き続ける企業の一つがDeNAであることは間違いない。現在、スマートフォン向けソーシャルアプリの開発に従事しているエンジニアはもちろん、これからこの世界に足を踏み入れようとするエンジニアにとっても、刺激あふれる一日がこうして終わった。
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