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クラウドで「情報の空洞化」が進む日本とこれから

日本の「製造の空洞化」、「金融の空洞化」が言われて久しいのですが、ここ近年「情報の空洞化」が進んでいます。

総務省が、2010年5月18日に公表した「 「クラウドコンピューティング時代のデータセンター活性化策に関する検討会」報告書」によると、流入トラヒックが総トラヒックが占める割合、つまり、海外発のトラヒック比率が、2004年の18.6%から2009年には44.1%に比率が増えています。このまま、クラウドの普及が進めば、近いうちに50%を超え、益々海外の比率は高まっていくことが予想されます。

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(出所:「クラウドコンピューティング時代のデータセンター活性化策に関する検討会」報告書 2010.5.18)

クラウドで「情報の空洞化」が進む日本

企業ユーザの視点で見た場合、クラウドは、高機能なサービスを利用することができ、データの場所は海外にあらろうと国内にあろうと、場所を気にせずサービス面や価格面ででメリットがあれば(セキュリティで懸念するユーザも一部ありますが)、導入効果が高く当然の選択であり、今後もサービスや技術の進化とともに利用拡大が予想されます。

また、クラウドサービス提供事業者の視点でみた場合、日本の事業者においても、アジアをはじめ世界各地でデータセンターの建設を急いでいます。今後のアジアをはじめとした新興国では、クラウドの市場拡大が予想されており、事業者の投資戦略としては当然の選択といえるでしょう。

しかし、このままの流れが進めば、先述したように日本の「情報の空洞化」が進むことが懸念されます。短期的には、クラウドの導入が進めば、個々の利用企業や提供事業者やメリットがあるものの、中長期視点で考えた場合、日本の「情報産業の空洞化」、ひいては日本産業全体に大きなマイナスを及ぼすことが懸念されます。

シンガポールのデータセンターはアジア、日本のデータセンターは国内

「日経コンピュータ2011.2.17)」のクローズアップ『加熱する「クラウドハブ」争いシンガポール、香港の野望』では、データセンター立地推進について、政府が積極的に推進している取り組みが紹介されています。

シンガポールでは、アマゾン、セールスフォース・ドットコム、マイクロソフトなど大手クラウド事業者が、アジアの「クラウドハブ」としての拠点を構えています。同様に日本のIT事業者もシンガポールや香港にハブとなるデータセンターの建設を進めています。

本記事の中に、ガートナージャパンのリサーチバイスプレジデントのコメントを引用させていただきます。

シンガポールと香港のデータセンターは、アジア全域がターゲットだ、一方、日本のそれは、国内向けにサービスを提供するためだけにある

日本では、東京に本社拠点をおく事業者向けに対応するため、多くのデータセンターは首都圏にあります。本記事によると、ソニーは2012年3月までに日本を含むアジアで運用する全てのサーバーをシンガポールに、その他の日本の多くの大手企業がシンガポールや香港にデータを集約する動きが進んでいます。そして、膨大なデータの拡大に対応するため、建設ラッシュが進んでいるのです。

なぜ、アジアのハブはシンガポールで香港なのか

それでは、なぜ、アジアのクラウドハブは日本ではなくシンガポールや香港がリードしているのでしょうか?日経コンピュータの記事を一部抜粋しながら、整理したいと思います。

(シンガポール)

本記事によると、シンガポールには30以上のでたセンター事業者が進出しており、その優位性は、

・電力や通信インフラが充実している
・データセンターの卸売業の存在
・手厚い政府の支援
・ITベンダーの主要拠点

シンガポールでは東京と比べると停電も少なく、電力供給も4割が余っているようです。また、アジアなどから海底ケーブルがシンガポールに集中しているのも大きいでしょう。そして、政府の手厚い支援もポイントとなります。総務省が2010年5月17日に公表した『 「スマート・クラウド研究会報告書」 』に各国の政府の取組みが紹介されています。

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「日本のデータセンターの国際競争力(2) ~海外(主にシンガポール)政府のクラウド政策(2009.11.7)」で紹介をさせていただきましたが、シンガポール政府は、ICTアウトソーシング事業の世界拠点を目指すという中長期戦略を掲げ、米国の大手クラウド事業者と積極的にアライアンスを構築し、支援策を展開しています。

日経コンピューター記事では、

データセンターに必要な土地や設備は、シンガポール政府が用意する。2014年の完成予定のデータセンターパークでは、電力設備、冷却設備、通信設備などを用意する。データセンター事業者に対する優遇制度も行う。

と、しています。政府自らが、積極的にデータセンターの誘致に乗り出しているのです。

シンガポールの法人税制優遇は、JETROなどの資料などにも記載されているように17%と非常に安く、高止まりしている日本の40%と比べると、大きな優位点となります。

(香港)

引き続き、日経コンピュータの記事を一部引用させていただきます。香港においては、

「香港を中国におけるデータセンターの集積地」

とする方針を進め、データセンターの運営に関して、中国のデータを香港に持ち出せるように特例が認められているのです。

総務省が、2010年5月18日に公表した「 「クラウドコンピューティング時代のデータセンター活性化策に関する検討会」報告書」に、各国別の法的規制が掲載されており、国外などにデータを持ち出す場合に、様々な規制がかけられています。中国においては、「データ規制操作権限法」などがあり、香港にデータ持ち出しの強化が与えられているのは特例中の特例と考えることができるでしょう。

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また、日経コンピュータの記事によると、香港では政府CIOが自らデータセンターの誘致を担当し、積極的な売り込むをしているようです。

日本の政府CIOに関しては、新IT戦略本部の「電子行政タスクフォース」で議論が進められており、2011年1月7日の「第9回 電子行政に関するタスクフォース」にて、ようやく、「政府CIO制度のグランドデザイン(案)」が示されています。しかしながら、データセンターの誘致のミッションなどについての明記は確認することができませんでした。

データセンターの誘致を進める自治体(地方)

これまでデータセンターの立地や誘致関連については、ブログの中でも何度かとりあげてきましたが、「『総合特区法案』閣議決定。データセンター(クラウド)関連は特区に指定されるのか(2011.2.18)」では、総合特区法案とデータセンターが特区への指定の可能性についてまとめさせていただきました。現在、日本においては各自治体が外資系事業者をはじめとして、データセンター誘致に向けて個別に対応し、条例などで対応しているケースが見られます。先日、『顧問にグーグル元名誉会長村上憲郎氏:クラウドデータセンター青森誘致に向けて協議会設立へ(2011.2.14) 』を寄稿させていただきましたが、アジアのクラウドハブに向けた誘致の取り組みが一部で始まろうとしているところです。

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クラウドのサービスの提供対象を東京などの首都圏に限定せず、アジアなどをターゲットにした場合、シンガポールや香港などとの競争に対抗していくためには、アジア市場も視野にいれた競争力のある郊外型データデータセンターの立地も進めていく必要があるでしょう。

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さくらインターネット社長の田中氏は、石狩市へのデータセンター設置にあたっては、アジア市場も視野にいれられており、今後、アジア市場へのクラウドサービスを見込んだ郊外型データセンターの拡大が期待されます。

日本の政府の動きとしては、「「データセンターの国内立地環境整備」に関わる規制緩和の対応と各省庁の見解について(2010.11.22)」などで紹介させていただきましたが、コンテナ型データセンターの設置にあたっては、建築基準法や消防法の規制緩和への対応も検討されており、規制緩和の通知は年度内が予定されています。政府の昨年からデータセンタの国内立地推進に関する報告書などを見ていると、重要施策として位置づけられており、今後の具体的な対応が期待されるところです。

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日本経済新聞『ニッポンこの20年町域ていないから何を学ぶのか 第5部揺らぐ土台(2011.2.20)』の記事には、

地方を活性化させるのであれば、情報処理などの知的産業を地方の中核都市で興すべきだった。中央省庁もわかっていなかったが、できなかった

と元通産官僚のコメントが掲載されています。

クラウドがこの先さらに普及し、地方で自治体・医療・教育クラウドや、スマートシティ・コミュニティで膨大なデータを扱うようになれば、地方のクラウドによる知的産業の集積地となり、アジア向けも視野にいれた地方発のサービスも展開できるかもしれません。

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日本からアジアへクラウドサービスを

今後、新興国を中心としたアジアの市場成長が期待されていますが、経済成長にあたって、企業が個人が一からシステムを構築よりもむしろクラウドを活用し、ビジネスを拡大させていくことが予想されます。特に、近年BOP(bottom of the pyramid)市場が注目されています。低所得者層向けの40億人ともいわれるBOP市場、そして、新興国は新たなクラウド市場のターゲットになるのは、間違いありません。

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政府や団体に関する取り組みを一部ご紹介しましょう。

ニフティ株式会社は、経済産業省の実証事業「平成22年度産業技術実用化開発事業補助金」(次世代高信頼・省エネ型IT 基盤実証事業)を利用して、「ニフティクラウド」を基盤利用し、ベンチャー企業がソーシャルアプリを東南アジアで展開しています(報道発表資料)。

ASPICは、ASP・SaaSデータセンター促進協議会 クラウドコンピューティング・国際戦略委員会にて、日本発のクラウドサービスの国際展開について、議論を進めています。2010年の12月21日には、中間報告会が開催され、社日本総研 理事・主席研究員 新保 豊 氏が『「日本のクラウドサービスの国際展開に向けた方向性とその戦略示唆」~再考ODA 戦略との連動の必要性~』というタイトルで、講演をされています。


まとめ

日本は、クラウドコンピューティングに進展に伴い、多かれ少なかれ「情報の空洞化」が進み、日本における日本国内にデータが蓄積されない「データ鎖国」が進むと予想されます。「データ鎖国」は、安全保障の問題もありますが、むしろ産業へのマイナスが大きいでしょう。日本が「データ鎖国」から抜け出すためには、一個人や一企業だけでの対応ではなかなか解決できない問題です。今、この問題に対して、どう取り組んでいくべきなのか、真剣に議論をし、政策にも十分に反映させていく必要があるのかもしれません。
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